働き方改革 ~2024年問題~

 

2024年問題とは、2019年4月1日に施行され、2024年4月から適用される「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」(以下:働き方改革関連法)によって生じる労働環境にまつわる問題の総称です。主に建設業界や物流・運送業界、医療業界などに大きな影響を及ぼすことが予想されています。

今回は以前の空気だよりでもご紹介したダイキンの冷媒の地球環境問題への対応の一環であり、2024年問題にも通じる建設業界に関わる取り組みについてご紹介します!

(空気だより過去回についてはこちら

 


建設業界を取り巻く課題

 

建築業界では人手不足、長時間労働、技術力の継承が課題となっています。ダイキンで製造している空調機は工事現場での取り付け工事(施工)が必要な製品です。そのため、建築業界での課題は、ダイキンにも影響のある課題なのです


空調機の取り付け

 

事務所等で使われるような天井カセットタイプ室内機が天井内部で取り付けられた様子を下記図1に示しています。

室内機と接続する配管は2種類あり1つは室内機~室外機を結び、冷媒が流れる冷媒配管。もう一つは室内機を冷房運転した際に発生するドレン(結露)水を屋外に排出するためのドレン配管です。

 

 

                 図1:天井内部イメージ

 

その中で、冷媒配管に注目すると、2種類の接続部分があります。1つは室内機と冷媒配管を接続する箇所(以下:フレア加工部)、もうひとつは他の種類の配管接続する時にも使われる、配管と配管を接続する箇所でこちらは溶接といって火器を使って配管同士を接合します。それら2つの配管は、現場で施工業者様にて施工されます。

 

配管内は冷媒が循環しますが、穴や接合部に隙間が生じると冷媒が大気中に放出され、地球温暖化に悪影響を及ぼします。今、特に冷媒の漏洩の恐れのある場所としてJRA(日本空調冷凍工業会)で指定されているのはフレア接続部分です。しかしこの部分については空調機メーカーの管轄範囲外であり、ジレンマを抱えていました。

 

 

 


フレア加工とは?

 

漏れ箇所にも指定されているフレア加工接続部分ですが、そもそもフレア加工とはどんなものかご存じですか?図のようにまっすぐな配管の接続部分をラッパのような形に専用の工具を使って現場で加工した部分を室内機側にくっつけ、その上からフレアナットで締め付けて圧着固定することを指しています。(図2、図3)

 

 

    図2:フレア加工 関連部材             図3:フレア加工 接続部図解       

 

 

 

フレアの大きさは配管径ごとに適正範囲が決まっています。大きすぎても、小さすぎても隙間ができてしまい、冷媒漏洩の原因となってしまうからです。冷媒漏洩は地球環境にも影響があるだけでなく、空調機が正常に動けなくなってしまう原因でもあるため、適正な工事が求められます。

 

このフレア加工の施工は熟練の技と言っても過言でなく、経験の浅い施工者にフレア加工を行ってもらったところ、1回で許容範囲のサイズのフレアを作ることが出来たのは35%で、65%はやり直しが必要となっていました。

 

そのような技量を求められる状況で、冷媒漏洩での地球環境対策でネックになったのは、技術力を維持するのに必要となる建築業界における人手不足でした。

 

 

 

熟練の技ともいえるフレア加工を習得している経験豊富な「職人」と呼ばれる人々ですが、建築業界は60歳以上が多数を占めています。また日本は少子高齢化になっており、現場の若手と言われるのは40代、そもそも若者が少ないことや外国人労働者も増えている状況がありました。

 

 このままだと経験豊富な方は少なくなり、空調機はあれど、施工ができないという状況になってしまうのでは・・・と考え、経験の浅い人でも冷媒漏洩しない方法はないものか?という施工の範疇に踏み込んだ課題にまで一石を投じることを決意し、2021年10月に標準付属品として発表したのが、フレア部の加工技量が不要となるネジ接合継手「フレアレスジョイント」です。

 

フレアレスジョイントの標準付属化へ ~現場からの反発~

フレアレスジョイントは、現場でフレア加工をしなくても配管と接続できるようにするための接手部材で、公共建築仕様に準拠した性能を保有しています。

 ※日本銅センター規格JCDA0012「冷媒用銅及び銅合金管に用いる機械的管継手」国土交通省部監修・公共建築改修工事標準仕様書(機械設備工事編) 平成31年(2018年)版

 ※ISO 14903 準拠 (冷凍システムとヒートポンプ — コンポーネントとジョイントの気密性の基準対応)

 ※フレアレスジョイントは接続される配管サイズごとに種類あり。

 

 

施工方法は3ステップのみ。特殊な工具も不要で、1台あたりの配管工事作業時間を約14%短縮し、個人技量に依存しない施工にすることが出来ます。

 

 

 

室内外機に標準付属品としてフレアレスジョイントを添付し(一部対象除く)、開発背景と共に認知活動を展開して行きました。

 

人材不足や環境問題に向き合うための部材でしたが、一方で、フレアレスジョイントを発表した当初は現場の「職人」の皆様からの反発も大きかったのです。「本当に冷媒は漏れないの?」「やりなれたフレア加工方法から、やり方を変えたくない。逆に時間がかかってしまう。」「私たちの技術が信じられないのか?ダイキンは余計なことをするな!」・・特に経験豊富な職人さんだからこそ、こんな声が聞こえてきていました。しかし若手や外国人労働者の方が多い現場などでは良さを実感して頂くことも多々ありました。

 

そのような中で、2024年問題、働き方改革関連法が差し迫ると、建築業界や施工会社は今までのやり方から、作業工程の見直し・労働環境を守る方向へと舵を切り、長時間労働の禁止、週休2日制、工期の適正化の対策を取らざるを得なくなります。そして「工期を守る為に短時間化」「誰がやっても同品質」「安全」といった点が求められる状況になりました。

 

また業界的にも、ネジ接合継手(フレアレスジョイント含)は2023年2月に改定されたJRAガイドラインGL-20にて「漏洩箇所にあたらない」と定められました。

 

 このような環境・状況と基準・規定が定まっていくに従って、職人さんも5・10年後を見据え始め、フレアレスジョントへの注目度も格段に上がってきています。

 

参考)JRA(日本空調冷凍工業会) ガイドライン GL-20

 

火なし接手「クイックパイパー」

 

配管工事でもう1つ、配管同士種類の接合方法に溶接接合があります。フレア加工作業と同様に経験が求められ、資格が必要となるなど、技量が求められる工法です。

 

これまでは現場で火気を使い接合してきましたが、昨今は「工事現場の安全性の為に、現場で火を使わないで欲しい」という施主からのニーズも増えてきています。

 

また、作業時間短縮、火気使用にまつわる申請や、他工事とのスケジュール調整不要という観点からも「火なし接続工法」が活用されている状況があります。

 

ダイキンではフレアレスジョイントと合わせて2021年4月より日本国内でグループ会社のオーケー器材㈱を通じて販売開始しており、一部海外でも2023年8月より展開しています。

 

 

ダイキンヨーロッパ「Tightfit fireless joint」

 

 

フレアレスジョイントや火なし接手クイックパイパーは常設ショールームのフーハ(東京/大阪)でも実機展示しておりますので、是非お立ち寄り下さい。

 

ダイキンソリューションプラザ「フーハ」

 

 

2024問題にあたり

 

働き方改革関連法にまつわる2024年問題。建築業界だけでなく、物流業界もダイキンにとっては身近な問題です。

物流に対しては、下記のような対応を既に取り入れています。

 

 ・入車の予定を聞いて倉庫でのピッキング待ちの時間を減らす(位置情報端末の活用)

 ・ドライバーに対して長距離輸送と近距離輸送を組み合わせる

 ・鉄道、船便活用などモーダルシフトの拡大

 ・大型車両の採用

 ・途中地点でドライバー交代

                                            

私たちの仕事を支えて下さるすべての方が健康・安全であり続け、継続可能な事業としていくために、改善を続けて行きたいと思います。

 

 

次回は一人一人の障がいを生かしながら働いている第三セクター「ダイキンサンライズ摂津」の取り組みをお送りします。次回もお楽しみに。

 

 

 

関連リンク

 

クイックパイパー オーケー器材  

・空気だより サーキュラーエコノミー ~冷媒に対する向き合い方~(前編)(後編)