
最近、従来のオフィスの在り方が変化し、「エンゲージメント」という概念の重要性が増しています。エンゲージメントには以下の3つが含まれます。
・顧客エンゲージメント: ブランドと顧客の感情的なつながりや関与度を測る概念。
・従業員エンゲージメント: 従業員が自分の仕事や会社に対してどれだけ関心や情熱を持っ
ているかを示す指標。
・ソーシャルメディアエンゲージメント: ソーシャルメディア上での「いいね」や
「コメント」、 「シェア」などのユーザーのインタラクションを示す指標。
ダイキン工業では、本社や東京支社のオフィス、工場の建設や改修を通じて、エンゲージメント向上を推進する動きが広がっています。2023年5月、東京ミッドタウン八重洲に東京支社を移転し、産官学が集まる東京で社内外との連携・協創活動の場を提供しています。社員が健康で安全に働ける職場環境を実現し、生産性や仕事の質の向上を目指しています。
今回は、これらの施設の建設や改修プロジェクトを担当する方へのインタビューを通じて、エンゲージメント向上の取り組みや戦略についてご紹介します。

・ ダイキン工業本社オフィスの様子

空気だより: 様々な施設の建設プロジェクトに携わっている大石課長に、エンゲージメント施策の狙いや戦略についてお伺いします。まず、現在の仕事におけるミッションを教えていただけますか。
大石課長: ダイキン工業には、新築建屋もあれば、古い工場もあります。そうした施設の改修工事では、単なる修繕や更新に留まらず、時代に応じた新しい価値を生みだし、建物を通じて働く人や社会に対する価値づくりに寄与することが大きなミッションだと考えています。
空気だより: 大石課長は本社やベトナム新社屋建設に携わられていたと伺いましたが、ダイキンならではの特徴や意識されていることは何かありますか。
大石課長: フェイストゥーフェイスで対話・議論をすることを重視しています。例えば、本社移転においては、オフィス委員会を立ち上げ、委員会メンバーでの繰返しディスカッションを行い、そこでの仮説をもって各部門長との対話も行いました。またベトナム新社屋の建設時には、現地に赴きスタッフとどのようなオフィスにするか話し合ったり、そこで働く人の想い・考えを対話の中で、関わる人が「自分ゴト」で考えるオフィスづくりに注力しました。
空気だより:そこで働く方やプロジェクトに関わるメンバーの納得感を重要視されているのですね。建設プロジェクトでは当初からエンゲージメント向上を第一に重要視されているのでしょうか。
大石課長: 「事務所や工場を作るとき」は生産性向上を大前提とし、そこでの従業員の働き方とエンゲージメントとは何かから議論をスタートしました。「場」から入るのではなく、そこで働く人の組織文化(組織コンセプト)とはどういったものかを、一緒になって検討します。
臨海工場の事務所改修での検討事例でお話しますと、社会的な変化としてはカーボンニュートラルへの意識の向上、人々の変化としてはコロナによる価値観や働き方の多様化があります。その中で、画一的なモノづくりの考え方から、働く人々の多様化に対応することが求められています。建物の環境価値向上と合わせて、そこで働く人が元気で活発に働ければ、それが生産性向上につながるという仮説のもと、従業員にとって働きやすい環境作りを進めていきたいと考えています。
空気だより: エンゲージメントや生産性向上の客観的評価はどのようにされていますか。
大石課長: 評価については、アンケートとCASBEEーWOスコアを評価軸として比較していこうとしています。工場では、働く場所についてのアンケートをこれまで全員に対しては行っていませんでした。リアルな現状把握がないままでの取り組みは、現場が求める「エンゲージメント」という軸がぶれてしまう可能性があるため、全員に対してのアンケートを実施しました。そこからの具体的な改修は現在検討中となりますが、施設部と協力会社、工事会社だけで検討するのではなく、その検討プロセスの中で他部署の人々を巻き込み、新しいつながりや発見の中で「自分ゴトで考える、働く場づくり」とすることで、活きた場につながると思っております。

・ダイキン工業堺製作所臨海1号工場外観
空気だより: 工場の環境改善(エンゲージメント向上)を進める中で、困難を感じる部分を教えて頂けますか。
大石課長: モノづくりの内容、働く時間などで価値観の違いがあります。総論賛成、核論反対など一律的な解決策がないといった点では難しさはあると思いますが、社会変化に応じた最低限必要な機能的な面での共通項目もあります。
トイレ等の機能的な改善は共通取組として実施しながらも、「働く場」「そこでの働き方」については、対話などのプロセスの中で丁寧な現状把握・客観的な現状理解は必須だと思っています。その為、臨海工場の取り組みと合わせて、堺製作所全体でも、これからの働き方についてのワークショップを開始し、価値観の議論・目線合わせを行いながら、「場」の有効活用についての議論を行っています。まずは自分たちの働く場に関心を持ち、未来にむけて「自分ゴト」として考えるオフィスつくりのプロセスに価値があると思っています。
空気だより: 取組の中で、他社様の施設を参考にされることはありますか。
大石課長: 自社物件での振り返り以外では、現在模索中です。ハードとしてのトレンドを追い求めるだけではなく、「場」の背景・物語にある本質を見極めることが重要だと感じています。他社見学は参画者の気分を高めるのに有効ですが、自分たちで考え試行錯誤するプロセスがエンゲージメントを上げるうえで直接かかわってくる重要なポイントだと考えています。表面的な見た目・デザインは 人の好みも含め多様ですが、多くの人を巻き込んで意識を高めあうプロセスを重視された事例を参考にしたいと考えています。どこかお薦めの参考事例等があれば是非教えていただきたいです(笑)
空気だより: 施設の立場でエンゲージメント施策を行う中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか。
大石課長: 様々な場所で、異なる人々がそれぞれ大切にすることややりたいことを持ち、多くの方々と議論を通じて環境を良くしていくことにやりがいや面白さを感じます。難しいプロジェクトほどやりがいがありますね。

・ダイキン東京支社集中エリア ・ダイキン東京支社議論エリア
~編集後記~
インタビューを通して、大石課長の前向きで革新的な姿勢がとても印象的でした。単純に施設を建てるだけでなく、そこで働く人や組織のエンゲージメントを高めるオフィスづくりのお陰で私たちの生産性も向上していると感じます。
関連リンク
本社移転に関するお知らせ | ニュースリリース | ダイキン工業株式会社
東京支社を東京ミッドタウン八重洲に移転 | ニュースリリース | ダイキン工業株式会社