障がいも個性、一人ひとりの能力を
最大限に発揮する職場づくり

 

ダイキン工業の特例子会社※1であるダイキンサンライズ摂津は、今年で創立30周年を迎えました。今回はダイキンのダイバーシティの取り組み、個性の活かし方の一つをご紹介させて頂きます。※1:障がい者雇用の促進と安定を目的として作られた子会社

 


社員自らの力で利益を上げよ!」

 

ダイキンサンライズ摂津は1993年に大阪府・摂津市・ダイキン工業の共同出資による第三セクターとして誕生しました。肢体不自由の社員16名で油機事業部の油圧部品の組み立てラインから事業をスタートさせました。

 

 

当時の経営トップが当時の市長から相談を受けたことから始まりましたが、意思決定に至るまでは深い熟慮があり、「この要請は難しい。一旦やると決めたら、会社を潰すわけにはいかん。社会に対する責任が生まれてくる。そして何よりも、働く人達の心を察したマネジメントができるノウハウは、ダイキンにはない。会社を作る以上は、その会社の社員の力によって利益を上げていかなければならない。単なる慈善事業で、働いている社員の人が満足するはずがない。ひょっとすると閉塞感に満ちた気持ちを持っておられる方が多いかもしれない。そういう人たちが、心から働くことの喜びを感じ、自らの力で厳しい訓練に耐えて、会社を作っていくということをできるマネジメント、リーダーシップがダイキングループにはあるのか」という葛藤も在ったのです。

 

 

 

そして「これからの時代は年齢・性別・障がいを問わずあらゆる人が責任を担う時代が来る。そのような社会にグループとして参画したい。作る以上は、会社が存続するよう社員自らの力で利益を上げよ」という想いを込めて設立しました。

 

 


優しさと厳しさ

 

「うちは仕事に対して厳しい。」「仕事である以上、寄り添う優しさだけではない。」立ち上げ当時から従事している製造部長の言葉にも表れているサンライズ摂津のマインド。リーマンショックやコロナ禍での影響もありましたが、22年度は売上高31億円と、業績を上げ続けています。

 

業務はダイキン工業および関係会社からの受注がほぼ100%を占めています。

空調部門では

 ・電気電子部品の組み立て                     

 ・機械部品の加工・組み立て

 ・エアコン付属部品のセット、梱包

 ・エアコンの解体、フロンガスの回収

 ・空気清浄機の修理

化学部門では

 ・フッ素化学製品の小分け充填、梱包等

さらにはCADやシステム開発から名刺やセキュリティカード作成など多岐に渡ります。

 

約220名の社員の内、健常者は17名。管理監督職に健常者を置くのではなく障がい者に一任する「障がい者主役の会社」です。部長、課長やリーダーへのキャリアアップの機会を作り、自己成長を促しています。品質を下げない事、納税者として自立した社会人として働く社員のモチベーションの在り方は厳しさと表裏一体のやりがいでもあります。

 

障がいも含めてその人がどんな人なのか丁寧に向き合い、知的障害の方には単純作業を、などと障害種別で職場や仕事を決めつけることはせず、1人1人が色んな業務にチャレンジしていけるようにしています。それは急に誰かが休んでも、仕事を回せるようにすることにもつながっていくのです。

 

 

 

     ピッキングエリア           ラック部分拡大

 

ただし「配慮は必要」であるとして、様々な工夫がされています。

 

 ・個数を間違わないように必要な数がピッタリとはまる箱(治具)に入れる。

 ・入れ忘れがないように音と色で表示させる。

 ・作業の細分化、単純化への改善。

 ・視覚・音での識別。

など工夫を行っています。

 

一例としては、部品の梱包では、たくさんの機種、能力、オプションなどから1品一様で入るオーダーに対して、ラックから該当部品をピッキングするエリアから、1パーツのラックごとにランプを設置し、ピッキング後ランプを消すと次のラックのランプが付くシステムを自社で構築しています。AからZまでのエリアに分け、後戻りがないようにランプが表示され、取り忘れが無いように工夫されています。

赤・緑・青のランプの色の区別で、同時に3名が作業できるようになっています。

 

 

 


働き続けるためのサポート

 

 

2009年頃から精神障害の社員数が大きく増え始め、現在は障害者社員の4割を超える人数を占めています。昔は診断名が付いていなかった、分かっていなかった精神障害の認知度が上がって来たことで精神の障害者手帳を持つ人が増えていることも一因となっています。

 

個人ごとに気にする点やこだわりポイントが違うので、周りが良く心身の状態について聞くこと、相談しやすい雰囲気をつくること、本人だけでなく医療機関や支援機関と連携することが大切です。

 

サンライズ摂津では企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)19名、精神保健福祉士3名、また管理監督職にあたる28名全員が職業生活相談員の資格を持っています。

 

一人ひとりの体調などを日誌システムで見える化し、その人の心身の状況と回答状況や特徴から声掛けを行うなどに活用しています。

 

また採用前には実習を行い、仕事を実際にやってみてもらう時間を持っています。気軽に実際の環境を体感してもらい、自分に合った会社や作業を確認し自信を持ってもらうためです。そして培ってきた雰囲気づくりと細やかな日々の配慮などにより精神障がい者の定着率は1年目で90%(高障機構調査では1年目データのみで49%)、2年目84%、4年目69%と高い継続水準を保つことにつながっています。

 

 

障害者雇用促進法

 

障害者雇用促進法では、常時雇用する労働者数に一定の雇用率(民間企業では2.3%)を乗じた人数の障害者を雇い入れることが事業主に義務づけられています。2023年3月に障害者雇用促進法施行令が改正され、2024年4月からは2.5%、2026年7月からは2.7%に段階的に法定雇用率が引き上げられることとなりました。

 

課題と目指す姿

 

現在は2.70%と2026年7月の法定雇用率は達成していますが、会社の発展には人材の確保が必須であり、今後の課題としています。また同時に企業としてダイバーシティの1つとして推進すること、障がい者の雇用について情報交換や見学会の受け入れなど、他企業、自治体、公益団体などとの連携を図っています。そして事業としてさらなる成長を目指していきます。


~編集後記~

 私たちの職場ではどこまで一緒に働くメンバーのことを分かっているだろうか?

その日の調子を聞くなどの声かけをしたり、周りの人がどんな考えを持っているか、得意なこと、苦手なことが何か知っているだろうか?

 

当たり前のことを当たり前に。

サンライズ摂津のメンバーからはそんな雰囲気を感じました。

 

次回も是非楽しみにして頂ければと思います!

 

 

 関連リンク

ダイキンサンライズ摂津 ホームページ

・東洋経済ONLINEバックナンバー 「20周年を迎えるダイキンの障害者雇用」